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2020年5月13日ニュース

ファミリービジネス関連の書籍を紹介する「J.P.通信」でEps.15 本田 宗一郎・名和 修編著『本田宗一郎 夢を力に 私の履歴書』を投稿しました。

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関東では5月上旬にも関わらず30度超え、一足早い夏気分です。何はともあれ、外出自粛要請延長と相まって、読書をするタイミングという意味では最適の時期といえるかもしれません。最近SNSを通じてブックカバーチャレンジをされている方も増えています。私の紹介する本がその一助になれればと願っております。

今回はクルマ産業で有名なHONDAの創業者、本田宗一郎さんに関する文庫本です。その破天荒な生き方やエピソード・名言など、何かのきっかけで知った方も多いと思います。独自の経営理念を貫き続けた、彼の生涯をスマートにまとめた良書です。特に激動の今を生きる若い方に、ご一読いただければと思います。

J.P.

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「本田宗一郎  夢を力に 私の履歴書」

本田 宗一郎

名和 修   編著

 

「会社経営の根本は、平等にある。従業員は経営者でもあり、経営に参加する権利と義務がある。」

生前、本田宗一郎が経営者として残した言葉の1つだ。この言葉に、私は本田宗一郎自身の根幹を成すものを感じた。貧しい幼少期に体験したカネによる差別に対する悔しさと、出る杭は打たれるとでも言わんばかりの社会の仕組みへの反発心を、著書の中でも語っている。HONDAとしての世界的活躍も、この幼少期からの想いを抱えながら自分のスジを通し続けてきたからこその結果だったと、そう感じている。

今なお多くの経営者・技術者から尊敬される本田宗一郎。幼い頃からモノ作りが大好きで、徒弟奉公先の自動車修理店で腕を磨き続け、若くして実力が認められ独立。その愚直さも相まってその人生はまさに波瀾万丈。その生き方に、多くの人々が魅せられた。世界を相手に日本の技術力の高さを示し、「良品に国境なし」をスローガンに、多くの失敗作の山と苦難の末に優れたエンジンやバイク・クルマを続々と世に出し、輝かしい功績を残した。

本能的な競争好きで有名だったが、ここで重要なのは、本田宗一郎つまり会社にとって、競争において勝つことはあくまで「結果」であり、「目的」ではないという点だ。独立して間もない頃、当時売り上げも好調だった修理工場から転身して、ピストンリングの製造という未知の世界に足を踏み入れたのも、モノマネを嫌い、常に時代のニーズと大衆の欲求を先取りする先見性を持つ本田宗一郎だからこその決断といえる。本田氏は、同業者同士が少ない仕事の取り合いをすることを避けた。時代が混乱し、自分がこれから何をするのか定まらない時は、1年間遊び暮らしたこともあった。その代わり、一度やると決めれば自他共に一切の妥協を許さなかった。怒ると現場でスパナを投げていた話は今でも語り継がれている。

 

本田氏の視線には、常に世界という高い目標があった。いつの時代にもいえることだが、高い目標に向かって進む者同士は自然と惹かれ合う。本田宗一郎にとっては、販売その他の面で大きな役割を果たした藤澤武夫氏がそうだった。彼らは性格も好みもある意味正反対ながら、境遇が似ていることや生き方の哲学という点で深く理解し合える仲だった。何より、自分にないものを持っているという点に大きな可能性を感じたのだろう。いつしか「技術の本田社長、販売の藤澤専務」と呼ばれるようになり、藤澤氏は自分たち亡き後も、HONDAの経営理念が崩れない仕組み作りに努めた。「人物の真の評価は、死後になってようやく定まる」と著書の中でもあるが、彼らは見事その役目も果たし、同時に勇退した。

 

著書の中で本田氏は、これからの後世の若者たちの力に大きな期待を寄せていると同時に、彼らがつまらない「社会の優等生」になることを危惧している。統制嫌いの本田氏らしい、若さとはそれだけ素晴らしいことなのだ。本田氏曰く若さとは、「困難に立ち向かう意欲、枠にとらわれずに新しい価値を生む知恵」である。これは50代を迎えた本田氏自身が常に重要視していた「個性の尊重」ともつながっている。既成概念に囚われることなく、物事を理論的に考え合理的に処理する知恵と能力こそが、人間の価値だと語る。

 

どれほど優れた技術や工夫、発明をしていても、一線で活躍し続けることは出来ない。その技術や発明が人々に求められている時に世に送り出せるタイミングの見極めが重要であり、そのタイミングを間違えれば最悪、その価値はゼロとなってしまう。

 

これから先、おそらく多くの人々の間で、生活様式レベルでの変化が起きるだろう。世の中のニーズや緊急性もどんどん変わる中で、自分のスジを通しきれなくなるかもしれない。そんな時、本田宗一郎のように、常に「楽しみ」を忘れずに挑戦し続けた誇り高い先人たちが残してくれた未来にいることを、今を生きる私たちは忘れてはならない。自分たちが、刻々と過ぎゆく時間の中で発揮すべき個性とは何か。私を含め、これから先の未来に携わる者全ての課題と考えたい。

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